スポーツ貧血に注意しよう!
皆さんこんにちは!
スポチューバーTV管理栄養士のはるみ先生です。
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ジュニアアスリートのための栄養学。今回のテーマは「スポーツ貧血」です。
いつもと同じトレーニングをしているのに息があがる、疲れやすいという症状はありませんか?
そんな時は、貧血になっている可能性が高いのですよ。
立ちくらみや、めまいだけではなく、スタミナ不足(特に持久力)や集中力の低下にもつながり、パフォーマンス低下の原因になります。
貧血ってどんなもの
貧血とは、血液中のヘモグロビンの濃度が低下した状態を言います。
皆さん、ヘモグロビンがどんなものか知っていますか?
ヘモグロビンとは赤血球の主成分で、鉄を含む赤色のタンパク質です。
赤血球の99パーセントを占め、酸素と結合しています。
ヘモグロビンには、全身の細胞に酸素を運ぶ役割があります。
そのため、濃度が低下すると身体の隅々まで酸素を運ぶ事ができなくなり、酸素不足に陥ってしまうのです。
ヘモグロビンを増やすよう鉄をしっかり摂ることが大切です。
栄養管理をしっかりしているオリンピック選手でも、男性で10パーセント、女性の20パーセントが貧血と診断されています。
症状がありながらも、血液検査をしていない方も入れるとさらに多くなるでしょう。
診断の基準ですが、血中ヘモグロビン量として、中学生は男女ともに、12.0g/㎗以下だと貧血と診断されます。
また、「赤血球の数」や「フェリチン」というタンパク質の量も判断材料になります。
検査をするのであれば、こちらも合わせて検査すると良いですね。
鉄の働きと欠乏症状
鉄の役割は、酸素の運搬の他にエネルギー代謝や神経伝達物質の合成、DNA合成、コラーゲンの生成など、身体を維持する多くの機能に関わっています。
アスリートは一般人よりも活動量が多く、新陳代謝も盛んなため身体を維持するための栄養素がより多く必要です。
鉄不足にも陥りやすく、不足すると様々な症状が現れてきます。
疲労感や、神経伝達物質がうまく作れないことによる神経症状、不安感、うつ症状なども鉄不足から起きている場合が多いのです。
また、コラーゲン生成には鉄が必要です。コラーゲンが不足することによって引き起こされる症状は、目に見えやすいものが多いのです。
爪の反り返りや二枚爪、口角炎、肌のカサつき。
その他にも、血管が脆くなることで起こる内出血や青あざ、骨粗鬆症もコラーゲン不足が原因の一つと言われています。
さらに、
- 頭痛、めまいや立ちくらみ、失神等の「脳の症状」
- 肩こりや疲労感等の「筋肉の症状」
- 動機や胸痛の「心臓の症状」
などがあります。
スポーツ貧血の原因
スポーツ貧血の原因は2つに分類できます
①鉄欠乏性貧血
1つ目の原因は「鉄欠乏性貧血」です。
赤血球のヘモグロビン濃度が低下することや、赤血球自体の量の減少など、鉄不足による貧血です。
運動中、大量の汗をかくことにより、鉄の排泄が高まります。
そもそも鉄は吸収率が低く、食べあわせや胃腸内環境の影響により吸収率がさらに低下し、不足しやすくなります。ハードな運動により疲れた胃腸は鉄の吸収率が低下しているかもしれません。
②運動性溶血性貧血
2つ目の原因は「運動性溶血性貧血」です。
運動の衝撃により、赤血球が壊れることで起こる貧血です。
マラソンやバレー、サッカーや剣道など、足の裏への衝撃が強いスポーツに起こりやすいとされています。
地面からの衝撃により、赤血球が破壊されてしまうのです。
衝撃の他にも、筋肉の強い収縮により、赤血球の膜が壊れてヘモグロビンが流れ出す「血管内溶血」も起こりやすいのです。
成長期のアスリートは特に「鉄欠乏性貧血」になりやすいので注意が必要です。
ジュニアアスリートの皆さんは、身体の成長に合わせて血液量も増やしていく必要があります。
しかし、成長の速度にヘモグロビン合成が追いつかないと、血液中のヘモグロビン濃度が低下してしまうことがあります。
しっかり食事を摂っているのに、スタミナ不足や立ちくらみ等がある場合は、その選手の体力に対して運動量が多過ぎる可能性があります。
運動量を減らして体調を整えてみましょう。
また、エネルギーの摂取量が足りないと鉄の吸収率が下がります。
成長に合わせて食事量を増やし、消化吸収を助けるために、咀嚼をしっかりすることも大切です。
トレーニングの初期に起こりやすい「希釈性貧血」
さらに、トレーニングの初期に起こりやすい「希釈性貧血」にも注意をしましょう。
「希釈性貧血」とは、血液量が一時的に増えることでヘモグロビン濃度が低下し、起こる症状です。
試験休みや怪我などで、練習をしばらくできないことがありますよね。
そのような状態から練習に復帰した時などに起こりやすい貧血です。
一時的なものなので心配はいりませんが、症状がある時は運動量を減らし、徐々に運動量を増やすようにしましょう。
一般的に貧血は、日々体内で造られている赤血球の量が、壊れる赤血球の量を上回ることで改善できます。
血を作る、つまり造血が大切だということですね。
次のスライドに造血に大切なポイント「6つ」をまとめてみました。
造血のポイント
①しっかり鉄を摂取する
運動時間が長いと、鉄を消化吸収する時間が短く、効率よく鉄を吸収できません。
さらに、激しい運動後では胃腸が疲れ、消化吸収率がより低下します。
週1日は休息日をつくり、しっかり鉄を摂る日を作りましょう。
②十分なエネルギー摂取する
エネルギー不足になると、生命維持を効率化するため、酸素の供給を減らし、ヘモグロビン量を減らすように身体は働きます。
エネルギー不足にならないよう、十分なエネルギー量を摂りましょう!
③栄養バランスの良い食事を摂る
タンパク質やビタミンが不足すると、赤血球が作れません。
④適度な運動量で練習を行う
ハプトグロビンという酵素の働きにより、破壊された赤血球のヘモグロビン合成がスムーズに行われます。
運動量が増え溶血量が増えると、ハプトグロビンが不足し、ヘモグロビンの合成が追いつかなくなってしまいます。
そのため、貧血の時は運動量の調整が必要です。
⑤質の良い睡眠を取る
睡眠中に新陳代謝が進みます。胃腸を整え、鉄の吸収がしやすくなります。
⑥ストレス解消
ストレスは自律神経が乱れ、胃腸内環境の乱れの原因となります。
副交感神経は、栄養素の消化吸収に大切な働きをしてくれます。
十分な鉄を摂るには
貧血予防には、「十分な鉄を摂ること」が大切です。
十分摂る必要があるのに、ミネラルの中でも特に鉄は吸収率が悪いと言われています。
鉄を効率良く吸収する為に、鉄にも種類があることを知りましょう。
鉄には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、この2つは吸収率が違います。
ヘム鉄の吸収率は30%、非ヘム鉄の吸収率は5%です。
食品別の吸収率をグラフに表しているのでご覧ください。
吸収率が大きく違うことから、鉄を摂取する際には「ヘム鉄」なのか「非ヘム鉄」なのか把握することが重要です。
大きく分けて、動物性の食材に多く含まれているのは「ヘム鉄」です。
レバーや砂肝、カツオ、マグロ、いわしに、さんま、牛肉の赤身などの食材はヘム鉄を多く含んでいます。
貝や植物性の食材に多く含まれているのは「非ヘム鉄」です。
あさり、しじみ、レンズ豆、納豆、がんもどき、小松菜、ほうれん草、キクラゲ、ココアなどです。
例外として、貝の非ヘム鉄は吸収率が良いです。
吸収率の低い非ヘム鉄の食品は、鉄の吸収を良くする栄養素「ビタミンCとタンパク質」と一緒に摂りましょう!
ビタミンCが多く含まれる食材は、パプリカ、レモン、柿、キウイ、ブロッコリー、ミニトマト...等です。
たんぱく質が多い食材は、肉類、魚介類、大豆製品です。
タンパク質を摂る際の注意点
ここでタンパク質を摂る際の注意点です
タンパク質の中でも卵や乳製品は、鉄吸収を阻害する栄養素が含まれているため、食べ合わせはよくありません。
鉄を摂るときはこれらの食材との食べ合わせに気をつけましょう!
鉄の吸収と食べ合わせ
卵や乳製品の他に、食べ合わせに注意が必要な食材があります。
①タンニン
食事と一緒に飲むこともある、緑茶や赤ワイン、コーヒーに含まれています。
食事中は水にすると良いですね。
②カルシウム
先程もお話ししましたが、乳製品も鉄の吸収を阻害します。
③食物繊維
特に、玄米は食物繊維が多いです。
お米を玄米だけで食べていると、鉄の吸収が悪くなってしまいます。
貧血の時は、白米を2、玄米を1の割合に混ぜて食べると良いです。
④炭酸
炭酸水の摂りすぎは胃の中を酸性からアルカリ性に傾けてしまい、 鉄を吸収しづらくしてしまいます。
食事中は水にしましょう。
⑤フィチン酸塩
ナッツ、全粒粉、玄米、ピーナッツバターなどに多く含まれています。
フィチン酸塩は、抗酸化作用が高く健康には必要です。
しかし、アルカリ性が強く鉄の吸収を阻害してしまいます。
また酸味料、pH調整剤として加工食品に添加されています。
⑥リン酸塩
リン酸塩は安いコーヒーや加工食品などに添加されています。
⑦シュウ酸
シュウ酸はアクと言われているものです。
主に、ほうれん草、タケノコ、キャベツ、さつまいもなどに多く含まれます。
体に良いからと鉄をたくさん摂っても、余ったものは排泄されてしまいます。
7つの食材との食べ合わせに注意して、いろんな食材をバランスよく食べましょう。
赤血球を作る栄養素を摂る
鉄を摂取することも大切ですが、「赤血球を作る栄養素」も意識して摂りましょう。
スライドに栄養素と食材をまとめたので、ご覧ください!
タンパク質が多い食材にはビタミンB6、B12も多く含まれています。
また、葉酸は葉という文字が使われているように緑が濃い野菜類にしっかり入っています。
鉄は不足しがちだとお話してきましたが、十分に摂ることで、余剰分を「貯蔵鉄」として肝臓や脾臓に溜めておく事ができるのです。
この貯蔵鉄をフェリチンといい、フェリチンは鉄とタンパク質でできています。
タンパク質が不足するとフェリチンは作れません。
ヘモグロビン自体には問題がないけれど、フェリチンが不足していることで貧血の症状が現れる方もとても多いです。
ちなみに、私は鉄不足を防ぐために、週1回「鉄摂取デー」を設けています。
例えば、やきとり屋でレバーの串を購入し1本食べたり、ローストビーフを食べたりしています。
まとめ
今回のまとめです。
- 今までより息があがったり疲れやすくなった時は貧血を疑ってみましょう
- 鉄は赤血球の主成分で、酸素を全身に運ぶ以外にも沢山の働きがある。
エネルギー代謝、神経伝達物質の合成、DNA合成、コラーゲン合成などに関わっている。 - 栄養バランスよく鉄を意識しながら必要エネルギー量をしっかり摂る。
- 胃腸の働きを良くするために、睡眠をしっかり取り、ストレスを抱えない。
貧血になった時は運動量を減らし、休息をとることも必要。 - 鉄には吸収率が高いヘム鉄と吸収率が低い非ヘム鉄がある。
非ヘム鉄の吸収を上げるにはビタミンCとタンパク質を一緒にとると良い。 - 鉄はためられます。
週1回は鉄摂取デーを設けて、不足しないようにしましょう。
レシピをチェックしよう!(写真をクリックするとレシピページに飛びます)
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